FLATT Project
抗うつ薬の最適使用戦略を確立するための他施設共同無作為比較試験
うつ病に対しては抗うつ剤が有効ですが、残念ながら最初から個々の患者さんに合った抗うつ剤が見つかるとは限りません。ですので、患者さんによっては合うお薬が見つかるまで何度か異なったお薬に変薬をすることがあります。一方、抗うつ剤以外にも認知行動療法という精神療法が有効であることもわかっています。さらに抗うつ剤と認知行動療法を一緒に用いることでいずれか単独よりも効果が高くなることも報告されています。
しかし、認知行動療法そのものは標準で1時間×16回の面接による治療を必要として、患者さんにも治療者にもたいへん時間のかかる治療法です。そこで、私たちは、この認知行動療法を、スマートフォン上でより実行しやすい形にしたアプリを作成しました。本臨床試験では、従来行われてきたように個々の患者さんに合うお薬を見つけようと変薬することに加えて、スマートフォン認知行動療法を併用することで、さらに治療効果が上がることを検証します。
結果

サマリー

北海道大学、東邦大学、名古屋市立大学、広島大学、高知大学およびその関連病院・クリニック20施設で、計164人の薬物抵抗性のうつ病患者さんに臨床試験にご参加をいただき、うち81人は変薬+こころアプリ、83人は変薬のみに割り付けられました。こころアプリを使用していただいた方々は平均して熱心にスマートフォン認知行動療法に取り組んでくださり、
研究のフローチャート
9週間の治療後は、
研究のフローチャート
と、うつ病の重症度を測定するPHQ-9やBDI-IIという尺度で、はっきりと有意差が付きました。これを寛解(ほぼ正常気分に戻ること)率や、反応(治療開始時よりも重症度が半分以下になること)率で見ると、治療抵抗性のうつ病に対する標準治療である変薬に比して、いずれも約2倍に増えることが分かりました。
研究のフローチャート
当初変薬のみとなった方々は9週間後からこころアプリを使用していただき、抑うつ状態の改善をみました。当初からこころアプリを使用していただいた方においては、9週間の後も治療効果が持続しました。
研究のフローチャート
試験結果は、読売新聞2017年11月16日夕刊で報道されました。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20171116-OYTET50007/
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論文

  • Watanabe N, Horikoshi M, Yamada M, Shimodera S, Akechi T, Miki K, Inagaki M, Yonemoto N, Imai H, Tajika A, Ogawa Y, Takeshima N, Hayasaka Y, Furukawa TA, Steering Committee of the Fun to Learn to A & Think through Technology P (2015) Adding smartphone-based cognitive-behavior therapy to pharmacotherapy for major depression (FLATT project): study protocol for a randomized controlled trial. Trials, 16, 293.
  • Mantani A, Kato T, Furukawa TA, Horikoshi M, Imai H, Hiroe T, Chino B, Funayama T, Yonemoto N, Zhou Q & Kawanishi N (2017) Smartphone Cognitive Behavioral Therapy as an Adjunct to Pharmacotherapy for Refractory Depression: Randomized Controlled Trial. Journal of Medical Internet Research, 19, e373.
  • Furukawa TA, Horikoshi M, Fujita H, Tsujino N, Jinnin R, Kako Y, Ogawa S, Sato H, Kitagawa N, Shinagawa Y, Ikeda Y, Imai H, Tajika A, Ogawa Y, Akechi T, Yamada M, Shimodera S, Watanabe N, Inagaki M & Hasegawa A (2018) Cognitive and behavioral skills exercises completed by patients with major depression during smartphone cognitive behavioral therapy: Secondary analysis of a randomized controlled trial. JMIR Mental Health, 5, e4.
  • Furukawa TA, Imai H, Horikoshi M, Shimodera S, Hiroe T, Funayama T & Akechi T (2018) Behavioral activation: Is it the expectation or achievement, of mastery or pleasure that contributes to improvement in depression? Journal of Affective Disorders, 238, 336-341.
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